もしエンジニアだらけの世界になったら

By kihara, 2016年9月21日

東京オリンピックからもう10年も過ぎた2030年。

 

この時代に生まれてエンジニアにならないのは損だ!30年は稼げる!と息巻いていたのはもう15年も前になるだろうか。その間に、およそ1,000万人がエンジニアを志し、この国、この世界の新しい未来を切り開いている。

 

やはり個を大切にする国民性は1人で全てを作り出せるエンジニアにとても適していた。几帳面だけど面倒くさがりの人達があらゆるものを自動化していく。そして産み出された時間でさらに便利な世界を作る。今やこの国のエンジニアはSAMURAIと呼ばれ、それぞれが多様な個性を光らせていた。

 

当初は信じられないくらいの反発もあった。

 

ただでさえ人が足りない業界は手段を選ばず圧力をかけて妨害を行い、これまで通り安い労働力の確保に必死だった。彼らは人ではなく、単純に手足が欲しいだけだった。その事に気付いているけれど、そこから抜け出せずに自分を安売りし続ける人が後を絶たなかった。

 

これを変えたのは「未来」だった。

 

2020年、東京オリンピックは結局、始まってみれば熱狂の中で終わった。が、人々の心の中にはスポーツではなく、焦りや希望が入り混じった感情にも支配されていた。前の年から、小さな子供たちがたくさんのプロダクトをリリースしていたのだ。取るに足らないものばかりで気にかけていなかったが、オリンピックを楽しむアプリのうち実に半数が小学生が作ったものだ。それはプログラミングの必修化によって作られたプロダクトだった。

やっと気付いた。気づかないふりをしていたのかもしれない。それは自分でも出来る、という事だ。そこから変わった。未来そのものである子供たちによるイノベーションだった。

エンジニアリングは究極に格好良いというお墨付きを得て、人々は続々と門戸を叩き出したのだ。ほんの数ヶ月でエンジニアへとなる人々を見てそれはさらに加速された。もちろん中には本当に向いてない人やプログラマで終わる人もいた。だが、そこから数年で世の中は劇的に変わり続けた。

先のイノベーションを恐れた業界は当初こそ反対の気勢をあげていたが、自力で変革を起こす組織に淘汰され業界図が塗り変わった。

最後まで残ったのはコンビニ、人材、建設、運送、公務員だった。周辺国から呼び寄せた人材で何とか踏ん張ったがついに折れた。1,000万人を超す斡旋で人材業界は空前の利益を得たが共倒れした。コンビニなんて最近は探す方が大変なくらいだ。

一家に1ドローンになってからはポチッと押せば勝手に買い物をしてくれる。会社に行く事もないし、みんな好きなところに住んでいてビルなんて要らなくなったし、現金なんてとっくになくなって税金もようやく一本化されたし、無駄だったことがキレイさっぱりシンプルになった。余談だが、ほとんどのモノはシェアリングされているなか、呼べば来るドローンが登場してからはペット的に飼われ、もうすぐ1人1ドローンになる。

だがこのイノベーションも今思えばギリギリのタイミングと言ってよかった。

既に経済は世界平均と同じレベルまで落ち込んでいたが、それ以上に周辺国にイニシアティブを取られていた事を想像するとゾッとする。先ほどの外国人労働者が自分達だったのかもしれないのだ。そして自国民の割合が著しく減少して崩壊していたかもしれない。民主主義でいる限り人口を減らす事は国を失う事と同意だ。

実は今も年収という数字だけ見ると15年前とそんなに変わっていない。ただ、無駄を省いた社会で働く事は、生きている価値を見つけやすくなっているようだ。それが証拠に徐々に人口も増え、人々はみな慎ましくも凛として生きている。

あと15年はエンジニアの時代だろう。と思っていたが、もっと長くなりそうだ。

future / maikaefer

このエントリーをはてなブックマークに追加